コラム「足あとを灯す」『第15編 声の体温』〜言葉に温度を乗せ〜
コラム「足あとを灯す」『第15編 声の体温』〜言葉に温度を乗せ〜
アニメやYouTubeといった刺激的なデジタル映像があふれる現代、子どもたちは目まぐるしいテンポと効果音で完結する画一的な画面に日常的に晒されています。あらかじめすべてが過剰に与えられる映像体験の中では、自ら想像の羽を広げる隙間が削ぎ落とされがちです。しかし、昔懐かしい「紙芝居」や「読み聞かせ」の場を開くとき、そこにはデジタルでは再現できない豊かな対話の空間が立ち現れます。
「声に体温を乗せる」、この言葉はもう30年ほど前、YouTubeもまだなかった頃、まだ紙芝居が残っていた頃、元アナウンサーだった方がある研修会の中で話していたことです。無味乾燥なニュース原稿、ニューステロップ画面だからこそ、声に体温を乗せることが大切だという内容でした。
一方的に流れ去る映像とは異なり、紙芝居の真骨頂は演者の「息遣い」や「声の体温」、そして次の場面へと移る絵の「めくるタイミング」と「絶妙な間」にあります。絵が切り替わる直前の静寂や呼吸を重ねる一瞬の余白において、子どもたちは息をのむようなワクワク感とともに、内面で自らのイメージを鮮やかに羽ばたかせます。すべてを描き尽くさないからこそ生まれる「行間の豊かさ」と、「声の温もり」が織りなす空間は、子どもたちの受動的な視聴を超えた自発的な感性と豊かな思考力をそっと呼び覚まします。高速化する現代だからこそ、この「声の体温」に満ちた静かな間合いと想像力の物語を大切に手渡してまいりたいと思います。(学校法人堀口学園理事長)